2014.8.14更新
当医院(山形県、河北町)では、2011年7月より太陽光発電を開始しました。
また、自宅(山形市)でも2012年7月から太陽光発電を開始しました。
環境になるべく負荷を与えない電気を使用したい、との思いからです。
しかし、山形県は雪国です。日照時間も多いとは言えません。そんな山形で太陽光発電は成り立つのか?
雪がつもる冬は、全然発電しないのではないか?
これは、雪国に住む多くの人たちが抱いている疑問だと思います。
この疑問に対し、雪国山形での実際のデータを示して、
雪国でも、太陽光発電は使えます、ということを示したいと思います。
ただし、雪国ならではのコツは必要です。
さらに、太陽光発電全般のポイントについても示したいと思います。
左の写真は、医院の屋根2カ所に設置された、太陽光発電パネルです。(山形県、河北町)
シャープ製シリコン単結晶パネル、 29枚、5.22kw。
写真左手パネルは、屋根の傾きの関係で、5度程度。
写真右手パネルは15度程度の角度で設置されています。
右の写真は、自宅の屋根3カ所に設置された太陽光パネルです。(山形県、山形市)
シャープ製シリコン単結晶パネル、30枚、5.85kw。
(携帯スマホで写真が表示されない場合、お手数をおかけいたしますが、パソコンから再度アクセスをお願いいたします。)
写真奥の2カ所のパネルは30度(そのうちの左手パネルの下には、雪止めが2カ所設置あります。右手パネルには一部のみに雪止めが1カ所設置あります。)
手前は15度の角度で設置されています(雪止めが1カ所設置あります)。
A) 自宅と医院の、太陽光発電1年間の総発電量を比較してみました(2012年8月〜2013年7月)。
自宅での年間総発電量は、6150kwhでした。パネル1kwあたりの年間総発電量は、1051kwhになります。
(5.85kwのパネルですので、6150kwh÷5.85kw=1051kwh/kw)
これは、ぴったり全国平均の年間太陽光発電量に相当します!!!
(1kw×12%(太陽光発電の日本での平均稼働効率)×24時間×365日=1051kwh)
しかし、医院での年間総発電量は、4654kwhでした。パネル1kwあたりの年間総発電量は、892kwhになります。
(5.22kwのパネルですので、4654kwh÷5.22kw=892kwh/kw)
これは、全国平均どころか、山形県の期待発電量にも至りません
(山形県の年間期待発電量はパネル1kwあたりおよそ1000kwhとされています)。
自宅と医院での発電量に、どうしてこのように差がついてしまったか?
下のグラフを見てください。自宅と医院のパネル1kwあたりの発電量を、月ごとに比較したものです。
自宅と医院での、パネル1kwあたりの月別発電量の比較
上のグラフから読み取れることは、
4月から8月では、パネル1kwあたりの月別発電量に差はほとんどありませんが、9月頃より発電量に差が出始め、12月、1月、2月ではきわめて大きな差がついています。
秋から発電量に差がつき始め、冬は、医院ではほとんど発電していません
自宅と医院との発電量に差が生じる原因は、パネルの設置角度に違いがあるためと考えています。
医院のパネルは、5度から15度と角度が小さいのですが、自宅のパネルは、主体は30度と大きめです。
(河北町は、山形市より20kmほど北ですが、積雪量は、県庁がある山形市の松波町とほぼ同じと思われます。日照量も山形市とほぼ変わらない印象です)
パネルの角度が小さい医院では、太陽の高度が低い秋に発電量が低下し始め、雪が降る冬には、雪が積もるや、その雪はそのままパネル上にとどまり、そのためにほとんど発電していないのです。
逆に、自宅では、30度の屋根では雪は冬でも滑り落ち、太陽が顔を出せば、効率よく(気温が低いので)発電を始めます。
以上のことから言えることは、雪国で発電を多くするための大事な工夫の一つは、いかに雪がパネル上にとどまらないようにするか、ということだと思います。
それには、
1,雪国の山形では、パネルの角度は30度以上がよい。
一般的にはパネルの角度は、30度が、1年を通しての発電効率が最大とされています(方角は真南がベスト)。
しかし、雪国では、パネルの角度が大きい方が、雪は早く滑り落ちることが期待できます。従って、雪国では、冬期は、30度より大きいパネル角度の方が、より発電量が多いと推定されます。
しかしながら、雪国での1年を通しての総発電量は、30度とそれ以上の角度で、どちらが多いかはまだ明らかになっていません(春、夏、秋では、パネルの角度が30度の発電量が最大かもしれないので)。
この辺は、山形県が、30度と40度のパネル角度で太陽光の発電量比較実験をしていますので、近々結論が出ると思います。http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1310/15/news074.html
パネルの発電量ベストの角度は、真南の場合、設置場所の緯度と同じという情報もあります。
もしそうなら、山形ですと38度、東京ですと35度となります。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20140127/330120/?ST=SP
以上から、現時点では、降雪地域での太陽光パネルの角度は30度以上が望ましい、とは言えると思います。
2,雪がパネルからより滑り落ちやすい状態にするためには、屋根に雪止めはない方がよい。
屋根に雪止めがあると、パネルから移動した雪が雪止めで止められるので、パネルの一部に雪が残ることにつながります。一部でもパネルが雪におおわれると、そのパネルのブロック全体が発電しないことになります。
ただし、下に通路があったり、駐車場があったりすると、落雪で被害が起きる可能性がありますので注意が必要です。
ちなみに、自宅では、30度パネルの手前側の下に駐車場があるため、やむを得ず、雪止めを2列設置しています。30度パネルの奥側には、雪止めは一部のみ一列設置してあります。それでも、上記のグラフのように、それなりに発電し、全国レベルの発電が可能となってはいますので、状況が許さなければ、雪止めの設定もやむを得ないと思います。
(パネル設定後2年ですが、その間は、駐車場への落雪はありません。)
*雪止めをしない太陽光パネルから3mほど離れた場所に雪が落ちて車を直撃、などとの報告もあるようですので、設定は業者と慎重に相談してください。
B) 雪国で太陽光発電を始めて、元が取れるのか?
自宅での2012年8月から2013年7月までの1年間の経費を見てみました。
売電価格は、17万8942円(42円/1kw)、自家消費価格は4万9285円でしたので、合計すると、1年間に22万8227円太陽光発電は稼いだことになります。
自宅の太陽光発電は、国などからの補助を差し引くと、工事費混みでほぼ200万円でしたので、200万円÷22万8227円=8.76年となり、自宅では、9年かからずに、元が取れることになります。
今後、電気代は更に上がっていくと予想されていますので、もっと早く元が取れそうです。
しかし、もう、補助も減っているし(山形では、まだ、県が補助を行っていますが。2014年5月時点)、売電価格も下がっているので、元は取れないのでは?と思われる方もいるでしょう。
これに対する答えとしては、パネルの設置工事自体が安くなっているし、また、電気代は、今後もほぼ確実に上がりそうなので、元を取るのは難しくはないのではないかと思ってはいます。ただ、私の経費に関する知識は2年前のものしかないなので、確認してから、アップできればと思ってはいます。
C)雪国向けには、太陽光パネルはどのメーカーがよいか?
ソーラーフロンティア;曇りでも発電量が多い。陰がパネルの一部にかかっても発電してくれるので、雪が一部かかっても発電してくれそうで、雪国向きか。値段も安い。しかし、パネル面積から見ると発電効率は低く、重量があるので注意。パネルを設置する場所が広ければ、グッド。
シャープ;発電効率普通、値段安め。老舗だけに、パネルは丈夫なようで、雪の重みにも強いようです。ネットによるパネル監視体制に歴史があり、安心か。
パナソニック ;発電効率がよいが、値段が高い。元を取るには、厳しいか。設置場所が狭いが、多少元手がかかっても多く発電したい場合にはよい。
東芝;発電効率、結構良く、値段もほどほどのよう。
三菱;雪にも強いと、三菱のHPでは書かれています。
京セラ;老舗です。
外国製;わかりません。
太陽光発電を医院と自宅で始めてみて、雪国でも、太陽光発電は使えると実感しています。
自宅では、冬を除き、太陽光発電の電力のみで、家庭内の電気全てをまかなえだけの発電量が得られています。
冬は1/3ほどの供給量ですが、パネルの角度や雪止めの工夫、パネルの選択によって、冬でも太陽光発電量を高く保つことが可能と考えます。
これから、家を新築する人では、理想的な形を作れるのではないでしょうか。
エネルギーは、地産地消で、その場で造られた再生可能エネルギーで全てをまかなえれば、理想的だと思います。
雪国だからといって、太陽光発電をあきらめないでほしいと願っています。